氷川清話

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/406159463X/mixi02-22/

2000
講談社
勝 海舟, 江藤 淳, 松浦 玲

吉本が編集した流布本『氷川清話』を徹底的に洗い直されて出版されたものです。吉本氏などによる改ざんなどを直し、海舟の元の話に限りなく近づけた作品になっています。つまり当時の政局を徹底的に批判している時局もの、というのが清話の主体であることが分かる作品になっています。それにしても伊藤内閣を徹底的に批判しているですね。

司馬遼太郎が、この海舟の清話をいろいろなところで引用しているのですが、司馬さんは古いバージョンを基に引用しているので少し実際と違ってしまっているところを発見しました。

例えば、両国橋で海舟が餅を海に捨てる話は、子供の時ではなく、結婚後の話であったことが本書に記されています。つまり、氷川に住んでいた頃であり、奥さんの親戚が住んでいた両国に餅を貰いに行った氷川への帰りに両国橋から捨てたようです。

また、この清話にいろいろな人物がでてきますが、西郷さんについて話している箇所が一番多く、それも海舟が人間的に西郷さんを尊敬していたことがよく分かる内容になっています。そして、西南戦争が何故あのようになったかを、西郷さんの子分の存在を指摘し、それに対して海舟自身が子分のいない独り身であることがここまで死なずに済んだ、という話は大変興味を持って読ませてもらいました。

龍馬の手紙には、海舟の話が人生の恩人として出てくるのですが、海舟の清話にはほとんど出てこない、というのもまた面白いとも思いました。龍馬については、何かの話のついでにしか出てこないのですが、それでもその短い話の中で龍馬を褒めている、というのも心に残りました。

作品そのものが活き活きとして、面白い読み物であると思います。