Decoding The Universe

Charles Seife
Penguin USA (P)
2007年1月30日

漸く、探し求めていた1つの形態に出会えた思いがします。

つまり、情報理論により、全て、つまり生命、意識から宇宙までをどこまで説明できるか、という問題です。具体的には、情報エントロピーからすべてを覗いてみる試みです。そんなことがこの1年間頭の中でぼやっとしてありました。ペンローズのThe Road to Realityに記載されたEntropyから見た宇宙論、特に重力の観点からの記述を読んでからますますそのように思い始めました。この本がそれに取り組んでまとめているのを見て感銘しました。“異端のゼロ”を書いた著者だけはあると思いました。

つまり、今まで別々に扱われていた相対性理論量子論情報理論により同じ土俵に乗る可能性が出てきたと思っているのです。

熱力学のエントロピーと情報エントロピーが見方は違うか密接に関わること、いや実は同じものであり、しかも、熱力学は情報理論の一形態でしかないことの説明はうまいですね。そんな基礎的な話から出発して“情報”は“物理”であることを改めて納得させられます。

その情報理論から相対性理論量子論を見直し、前者が“情報は光よりも早く伝わらない”ということを述べているにすぎない、とし、さらに量子論が小さな世界だけを述べているのではなく、すべての世界に見事に当てはまることを述べている論理展開には感動さえ覚えます。つまり古典的情報理論から量子情報理論への展開です。

そこでは、ペンローズ等がたびたび問題視する観察の問題を、自然が持ちうる情報の測定、すなわちdecoherenceとして説明する内容から、我々が住む宇宙がその情報により形づけられる話は実におもしろい。

そして、情報理論の展開の先に、多重宇宙が論理的に存在しなくてはならない、というストーリを食い入るように読んでいる自分を発見しました。我々が住む宇宙は有限であるが、それらの宇宙を多重に持つ宇宙が無限であること、つまり多重宇宙の存在を認めると、Superpositionと Entanglingの現象を納得してしまいますね。

"Information can be neither created nor destroyed"、という法則は実に面白いですね。

(日本語訳もすでに出版されているんですね。読んでみることにします。)