そして世界に不確定性がもたらされた―ハイゼンベルクの物理学革命

2007
早川書房
デイヴィッド・リンドリー, 阪本 芳久

Charles Seifeの著書でるDecoding the Universe: How the New Science of Information Is Explaining Everything in the Cosmos, from Our Brains to Black Holesを読み、その中で(量子)情報理論を土台にして量子論相対性理論を載せて新たな論理展開を進めた挑戦的な話に感銘を受けた後、本書を読んでみました。

つまり、これからは、情報理論不確定性原理の2つの論理が基本論理として色々と展開されていくのではないか、との立場で期待して読んでみました。

しかし、残念なことにそこまでの話はなく、あくまでもハイゼンベルクにより提案された不確定原理が過去においてどのように展開されたかを、彼を取り巻くアインシュタイン、ボーア、シュレディンガーディラック、パウリを中心にしたややゴシップ的な話題をも踏んだ書籍になっています。

なお、アインシュタインが如何に量子論的な発想を心配し、波動方程式を導いたシュレディンガー自身が、どうして自分の導いた式が意味する本質を最後まで理解できなかったか、さらにはハイゼンベルク自身は、不確定性原理を数学的に表現する行列力学を導けなかった話などは面白く読ませて貰いました。

人間の知的営みの一端を知る貴重な作品だと思います。そして意見の異なる人との真摯な議論が如何に重要であるかを訴えている書物でもあると思います。