「明治」という国家

1999
文藝春秋
司馬 遼太郎

本作品を読むと司馬さんが著した明治や江戸末期を舞台にした作品の数々の場面が蘇ってきます。そして、それら作品の裏に司馬さんが込めた思いが伝わってきます。本作品を通して、日本が失った“サムライ”と日本が得た“国民”、そして江戸時代の多様性と明治以降の官僚中央集権による同一化の功罪を、さらに教会の無いプロテスタンティズムとサムライ精神の同一性に触れています。プロテスタントであり、市民革命的精神を持ったオランダ人であるカッテンディーケと勝海舟の出会い、それにより勝海舟の中に生じた国民意識が、坂本龍馬西郷隆盛に伝達していった話に歴史の1つの心の流れを感じてしまいます。いい作品です。