潟のみち
司馬さんは、街道をゆく“潟のみち”で新潟の低湿地を訪れ、耕作に適さない土地を如何に工夫して今のようにしたかに興味を抱きながら信濃川と阿賀野川からなる中州を歩いています。
新潟は、僕にとっては身近な土地です。親戚の方々が多く住んでいることから幼少の頃に時々訪れたことがあります。
ある年の冬、幼い僕は、父に連れられて親戚の方のお葬式に出席するために上野駅から蒸気機関車に乗り、長時間揺られた事を思い出します。長いトンネルを通り抜けると突然、銀世界にワープした時の興奮を今でも忘れられません。それまでの揺れによる疲れが一度に消えたことを思い出します。
父と訪れた家は、信濃川沿いにあります。信濃川が作り出した低い土地を避けた小高い丘の中腹にありました。冬の間は一面雪に覆われていますが、夏は、信濃川が作り出した広大な土地に葦が茂り、その外側に水田がどこまでも広がる風景が思い出として残っています。
その葦と水田からなる尽きることのない広がりに幼い僕は恐れを感じていたのか、一人遊ぶ時は、いつも家が建つ丘の森かそこに流れる小川で遊ぶことが多かった記憶があります。それほど僕にとっては空間が広すぎ、どう対処したらいいのか分からなかった思い出があります。
この風景は、そんな思い出を彷彿させてくれます。
ある日、父が新潟までの道が走りやくすなったので車で親戚の家に遊びに行こう、とのことで家族全員でドライブした記憶があります。確か、8時間以上かかってたどり着いた記憶があります。それほど新潟は僕にとって遠いイメージがあります。今は、3時間足らずで新潟港に着くことができ隔世の思いがします。