納沙布岬界隈

天気が悪く納沙布岬から国後島を遠望することが出来なかったのが残念です。

高田屋喜兵衛が操る北前船が、リコルドが率いるロシア船に拿捕された国後島南端の風景が見たく納沙布岬に立ちました。

司馬遼太郎の「菜の花の沖」に描かれた風景を見たく知床半島から羅臼港、根室港、そして納沙布岬までの往復をドライブしました。

高田屋喜兵衛の人生に大きく影響を与えたこの事件で、高田屋喜兵衛は日本人としての意思を強く持った、或いは持ち始めた個人としての尊厳を恥じることなくロシア人に示した一人であることを思うと、まさに、鎖国という奇妙な世界の中で育ちつつある市民意識の芽生えの証ではないかと思うのです。この風景の中で高田屋喜兵衛が、択捉、国後、函館、そして大阪を駆け巡ったことを思うと雨と霧に覆われた納沙布岬風景が輝いて見えました。

八ヶ月後にこの場所に戻ってきたリコルドと高田屋喜兵衛のやり取りほど心に残る風景はないかもしれない。その風景が両者のそれぞれの日記に全く別に書かれたにも関わらず内容が一致してるのがまたいいですね。その内容を表現したく司馬さんが、この長編を書いたように思えるほどに感動的でもあります。