木曜島の夜会

司馬遼太郎全集 第50巻にあります。
1984
文藝春秋

司馬さんの街道をゆく“熊野・古座街道 ”の延長上の作品としてこの木曜島の夜会があります。“熊野・古座街道 ”に登場する建築家である司馬さんの友人の話から、熊野の人々がニューギニアとオーストラリアの間の海峡にある小さな島に出稼ぎに行った風景を描いてくれています。そこで繰り広げられる営みの中に、なぜ貧しい熊野の山百姓の人々が、しかも15歳程度の少年らが金銭を稼ぎに出かけたかを明治時代の石高経済から貨幣経済への流れなどの社会環境の変化の中での人々の生活を描きながら、司馬さんならではの日本人探求、そして人間探求論が語られています。100頁ほどの短い作品ですが、人間の重みを感じる作品になっています。