春灯雑記

司馬遼太郎全集  第53巻
   文芸春秋 1998年12月

司馬さんの思想のかけらに触れることができる作品で以下の構成になっています。
・心と形
・護貞氏の話
スコットランド
・踏み出しますか
・義務について

どのエッセイもその内容は鋭くかつ厳しい指摘になっています。

作品“心と形”は、つまり心と肉体についての宗教論です。特に、仏教にたいする考えに共感してしまいます。キリスト教は絶対論を、そして仏教は相対論をであり、無我という無神論、霊魂否定に尽きることを言明し、生命を含めた宇宙への客観的態度であるという点で科学であり宗教になりえない。しかし、自他を客観化しきってしまったところに悟りがある、という点においてのみ宗教になりえている、との指摘は忘れる事のできない言葉であると、昔も今も思い続けています。

そして死体を“ほとけ”とよび始めた1300年ころから日本の仏教の発展は終わってしまった、という指摘は、昨今のTVに出てくるなにやら化け物(僕には全く理解できない、という意味で)を見ていると考えさせられてしまいます。